税金マル得情報「親が子供にお金を貸す相続税対策」

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1.お金を貸す相続税対策の概要
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本ニュースレターvol.112(2024年12月号)で「親が子供にお金を貸す相続税対策」を解説しました。 今回は「この相続税対策の実行後の話」を解説します。vol.112の内容を簡単に復習すると、➀祖父母が孫にお金を貸す、または、親が子にお金を貸す、②子や孫は借りたお金で株式、投資信託などを購入する、または、生命保険に加入する、という対策でした。
祖父母や親の相続財産は預貯金であれ、貸付金であれ、相続税の計算上の評価額は同じです。しかし、借りた子や孫は株式などで運用する、または、生命保険に加入することにより財産が増える、という方法です。
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2.実際に対策を行なった後の話
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では、この対策を行った後の話です。お金を貸した人(祖父母、親)が他界した場合、貸付金(相続財産)を誰が相続するのか?ということです。2つのパターンに分けて解説していきますが、あくまでも1例であり、これらがすべてではありません。登場人物を祖父母、子(祖父母の相続人)、孫(子の子)とします。
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3.祖父母が孫にお金を貸す場合
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○パターン1
・祖父母が貸したお金(貸付金)は子が相続する
・子は貸付金を相続したことにより相続税を支払う
・債権者が祖父母から子に変わり、孫は子に返済をしていく
・全額の返済前に子が他界したら、貸付金は孫が相続する
・孫の中で「債務者の立場」と「債権者の立場」が1つになり、孫は返済義務が無くなる(民法における「混同」といいます。以下、同じ。)
○パターン2
・祖父母が貸したお金(貸付金)に孫に遺贈する
・孫は貸付金を遺贈されたことにより相続税を支払う(相続税の納税資金が無ければ、子から借りる)
・孫の中で「債務者の立場」と「債権者の立場」が1つになり、孫は返済義務が無くなる
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4.親が子にお金を貸す場合
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・親が貸したお金(貸付金)は子が相続する
・子は貸付金を相続したことに対する相続税を支払う
・子の中で「債務者の立場」と「債権者の立場」が1つになり、子は返済義務が無くなる
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5.税務上の注意点とまとめ
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この方法を実行する場合の注意点は「金銭消費貸借契約書を作成する」、「実際に返済する」ということです。「書面もなく、ある時払いの催促なし」では税務調査で否認され、貸付けではなく、贈与と認定されてしまいます。
この貸付金スキームは「富裕層が富裕層であり続ける」、「地主さんが地主さんであり続ける」という意味において、非常に有効な方法です。
もちろん、この方法は富裕層や地主さんに限った話ではなく、資産規模に関わらず、誰もが検討すべき方法です。相続税の対象とならないサラリーマンの方であっても検討すべき方法です。
今回は貸付けを前提に解説しましたが、生前贈与(暦年贈与、相続時精算課税制度による贈与)を活用することもあります。どの方法で、どの程度の対策をすべきなのかはケースバイケースですが、ぜひ、ご参考にして頂ければと思います。