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税金マル得情報 vol.123「新しい特定親族特別控除という制度の注意点」
1.扶養控除の要件とは?
子供や両親などの親族を扶養している場合には、給与などの所得から一定金額を控除してくれる扶養控除という制度があります。令和6年度まで、扶養控除の対象となる親族とは、下記の条件をすべて満たした人でした。
① 配偶者以外の親族であること
② 納税者と生計が一であること
③ 年間の合計所得金額が58万円以下であること
④ 個人事業主の事業専従者ではないこと
⑤ 12月31日時点で年齢が16歳以上であること
上記の条件を満たせば、一般の扶養親族として扶養している人の所得から38万円を控除できます。
ただし、12月31日時点で19歳以上23歳未満の子供は特定扶養親族と呼ばれて、扶養している人の所得から63万円を控除できます。
また、12月31日時点で70歳以上の両親などは老人扶養親族と呼ばれて、同居していれば58万円、同居していなければ48万円を扶養している人の所得から控除できます。
2.判定日はいつ時点のものか?
令和7年度の税制改正で、新しく特定親族特別控除という制度が創設されました。具体的には、19歳以上23歳未満の子供について、③の条件だけを緩和して、その合計所得金額が58万円超123万円以下であれば、1人当たり最大63万円を扶養している人の所得から控除してくれる制度となります。なお、この制度の対象となる子供の人数に制限はありません。
このとき、年齢や合計所得金額は原則として12月末の時点で判定するのですが、勤務している会社に対して年末調整の申請を行うのは通常11月から12月中旬までになるはずです。そのため、12月末の子供の年齢は判定できますが、合計所得金額については、年末調整の申請を行う日の見積額で判定することになります。それでも、控除できる金額については、子供である扶養親族の合計所得金額によって9段階で変動するため、12月末までのアルバイトの状況をよく本人に確認して、見積額を慎重に計算する必要があります。
また、年収ではなく、合計所得金額で判定しますので、給与ならば額面金額から給与所得控除を差し引いた金額、事業所得ならば売上から経費を差し引いた金額となる点にも注意が必要です。ちなみに、子供の収入が給与だけならば、額面金額で123万円超188万円以下であれば、特定親族特別控除の対象となります。
3.特定親族特別控除が適用できないケース
親族が特定親族特別控除の条件を満たしていても、この制度を使えないケースがあります。
まず、夫婦が共働きで、子供が特定親族特別控除の条件を満たす場合です。このとき、夫婦のうち、どちらか一方のみしか特定親族特別控除を使うことができません。同様に、祖父と父親と子供が同居している場合には、祖父または父親の一方のみしか、子供を対象にした特定親族特別控除を使うことができないのです。
次に、両親が長女夫婦と同居していて、長女が夫の配偶者特別控除の対象になっている場合です。このとき、長女が特定親族特別控除の条件を満たしていても、両親がこの制度を使うことはできません。一方、夫が長女を配偶者特別控除の対象にしていなければ、両親は長女を対象にした特定親族特別控除を使うことができます。
最後に、兄弟で同居していて、兄が弟を対象にして特定親族特別控除を使っている場合は、弟は兄を対象にした特定親族特別控除を使うことはできません。
同居している家族の中では、基本的に所得が最も高い人が特定親族特別控除を使うべきです。会社に対して年末調整の申請を行う前に、誰がこの制度を使うべきか、家族で話し合いの場を持ちましょう。